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新聞 2001年1月1日

地域の特性を生かし躍進する企業

雪国過疎地を宝の山に
松之山町・リュウド株式会社

会社概要
所在地 東頚松之山町東川
資本金 9800万円
設立 1992年8月
事業内容 携帯電話関連ソフトおよびハードの開発・製造など
売上高 3億2000万(2000年3月期)
従業員 12人(パート含む)

 雪国過疎地の利点・欠点を巧みに利用克服し、松之山町東川で携帯電話の関連ソフト、ハードやコンピュータソフト、周辺機器の開発、製造を手掛けるリュウド(株)(長澤久吉社長)。その雪国過疎地の利点をついた低コスト経営は、多くの新聞、雑誌などで紹介され高い評価を得ている。一方、同社の開発した製品もパソコン雑誌の読者人気投票で準グランプリを受賞するなど高い人気を得ている。

社内の様子
規則的に並んだ窓に
保育所の面影が残る社内

 社屋には廃校になった保育所を利用し、オフィス、倉庫、駐車場、合わせて約157坪が、なんと家賃月々3万円。従業員にパートを起用することで人件費も押さえている。過疎地の破格な家賃、都会に比べ低い人件費。これらにより低コスト経営を実現した。「東京や大阪の企業に比べ、約3割は価格を安くすることも可能。価格競争で負けない」と、クロス10で先月行われた人材育成啓発講演会で長澤社長は話している。

 首都圏から離れた地方のハンディは宅配便、FAX、インターネットで克服。FAXやメールで注文や打ち合わせを行い、商品の発送は宅配便で行う。「10年前と違い、豪雪地の松之山でも道路の無雪化が進んで、宅急便も普及した。四国、本州には一晩で送れるから、東京と変わらない」。

 コンピュータ・ビジネスはアメリカが主力。同社は自社開発以外はアメリカメーカーの製品に特化しているため、ビジネス情報は東京を経由することなく、海外からネットでいち早く届く。長澤社長は「ネットワークをフルに活用すれば地方のハンディは無くなる。逆に物価が安い分、都会よりメリットは大きい」と力説する。

 長澤社長(40)は松之山温泉明星館の長男として生まれ、昭和51年に長岡工業高専に入学。卒業後、ソニー製品の下請け電気部品メーカー・クーロン(株)に入社。スリランカ、アメリカ派遣を経て、昭和62年、28歳のときクーロンを退社し、故郷松之山町で個人事業としてスタート。平成4年に株式会社にした。学生時代から独立志向が強く、サラリーマン時代に開業資金をためて独立。しかし、初めの2年は全く売上が出せず、黒字になるまで5年かかった。「かあちゃん(奥さん)のヒモ生活を送っていた」と創業当時を振り返る。アメリカ派遣時代に出会ったユダヤ系の商売セミナーで学んだ「成功するまでやめちゃならん」を信念に努力を続け着々と業績を伸ばし、平成12年3月期、3億円の年間売上を上げ、無借金経営を実践している。

梱包作業の様子
製品を梱包する社員


 講演会で長澤社長は「今いいのは、インターネット。どこへでも流通を通さずに販売できる」と話し、過疎地でのeビジネスの可能性を語った。そして、現在、同社は新規事業として「e発送.com」という、eコマース(電子商取引)をトータルに支援する事業に力を入れている。「ブランド商品を持っていて、インターネット販売をしたい。でもインターネットはわからない」という企業から、インターネットの立ち上げから代金回収まで引き受けるというもの。成功報酬型で、依頼主は商品を預けるだけ。預かった商品の管理は、廃校、廃工場を利用して低コスト化を図る。問屋を通す通常の流通よりも、はるかに低コストで流通させることができ、しかも翌月手形ではなく、現金で払うのが特徴。今、その一環として、あるシューズブランドのネット販売を手掛けている。

 ある雑誌は「10年後の大企業1000社」の中にリュウドを上げている。人材育成講演会で訪れた人から「10年後はどうなっていたいか」と質問され、長澤社長は「物づくりをたんたんとやっていたいですね」と笑顔で答えていた。