深い山に抱かれた新潟県松代町。冬には数メートルの雪が積もり、住宅の4割は高齢者だ。そんな雪国の過疎地に情報技術(IT)関連のベンチャー企業、リュウドはある。
過疎地とITベンチャーは一見、相いれない。だが、長沢久吉社長は「全国相手の商売ならば過疎地にメリットはある」と言い切る。まず、家賃が安い。以前、本社にしていた廃校の中学校は5教室で月1万円。働く場所がないため、パートはすぐに集まるし、定着率も高い。宅配便を利用すれば、東京、大阪にも一日で商品は届く。
数年前、1980年代後半の創業当時から競い合ってきた東京の同業他社が倒産した。「毎月の経費がうちより百万円は高かった」と長沢社長は話す。リュウドは当時、無借金経営だった。
横浜市内の上水道施設。東京電力と川崎市がミニ水力発電所の設置作業を進める。環境負荷の小さな発電の試みだ。異常がないか見張るのは、リュウドが開発した携帯電波網による監視装置。三菱電機など名だたる大企業が参加したコンペを勝ち抜いた。
決め手は圧倒的なコストの低さ。携帯電話の周辺機器や電波網を使ったサービスに研究開発を集中してきた成果だ。「これまでIT関連のビジネスはすべて米国発だった。携帯は日本が最先端。電波さえ入れば東京も山奥も同じ」。県内で400人の技術者を雇用し、自社製品で世界の企業と戦う。長沢社長は創業時からの夢に挑み続ける。
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